(ネコ・パブリッシング、2001年)
☆鉄道雑誌界の“Nature”“Science”だからこそ
この本の最大の問題点については、既に詳しく記しました。
一方、志村線および35系統以外については写真も解説もたいへん優れています。霞町の都電写真を通して、松本隆さんの詩作の原点がよりはっきりイメージできたこともこの本あってこそです。
停留場間の実測距離を付して、1967年(昭和42年)秋時点における解説文をつけるというアイデアも秀逸ですが、それゆえに「最大の過ち」が見逃され、かえって権威化してしまうという現象をもたらしました。まさかそこに間違いがあるとは、誰も想像しないのでしょう。優れた著作だからこそ、責任もまた大きくなるということを実感します。
本書は「RM Library」シリーズとして発行されました。このシリーズでは全国各地の昭和期の鉄道・軌道について、一流の執筆陣を揃えて、貴重な写真をきれいな形で掲載する方針を取っていて、極めて高い評価を得ています。鉄道書籍を扱う書店にはバックナンバーが多数揃えられています。
学術雑誌でいえば”Nature” ”Science”クラスの権威といえるでしょう。
だからこそ、過ちを認めるに憚ることなかれ、です。
今の状態は、ナントカ細胞の論文についてNature誌がRetract(撤回)の手続きをまだ取っていないようなものです。学術雑誌では何年過ぎようとも、誤りが見つかれば訂正記事を載せるか、論文そのものを取り消します。
RM Libraryでは絶版を出さないようにしたいと伺いましたが、「都電系統案内」についてだけは、ぜひ改訂版を出していただきたく存じます。このシリーズの信頼度を高め、後世に伝えていくためにも。