2016年10月25日火曜日

都電本ガイド(20)都営交通100周年 都電写真集 △

(東京都交通局・編、2011年)

☆埋もれた地域に当てられたスポットライト

201181日に、東京市電気局発足から100年を迎えた交通局の記念事業の一環として出版されました。同年7月から9月にかけて墨田区の江戸東京博物館で開催された「東京の交通100年博」開催記念でもあります。交通局公式の都電写真集としては3作目です。

あるブログでは「(過去の写真集に比べて)劣っている」「ゆるい」などという感想が掲載されていますが、劣っているとは失礼な。有名どころや、歴史的資料は既に大方紹介していることを承知の上で、何とか喜んでもらおうと編集担当の人たちが工夫を凝らした跡を見て取る姿勢を持ってみませんか。

各停留場の記事でも述べましたが、長後町一丁目や蓮沼町など、おそらく記録が残っていないであろうと考えていた板橋区内のマイナー停留場の写真が小さくとも掲載されただけで、すばらしい進歩です。志村線でも副名称がつけられていた停留場があると確認できたことも大きな収穫でした。

系統紹介のページで、各停留場間の距離を「軌道線路実測粁程図」に基づいて表示するというアイデアは「都電系統案内」で採用されていますが、「それを地図にしただけ」とはあまりにも情けないご感想…それがどれほどの長足の進歩であるかご理解いただけないと、ちょっともったいない本かもしれません。

荒川線の現状にことさらスペースを割くことなく、7500形や8000形のパンフレット、巣鴨営業所で使っていたZパンタ搭載の6031カラー写真(18系統。志村線にも来ていたのでしょうか。)、五輪対策として「KANDABASHI」の表記をつけた系統板など、細かな点の記録にも目をひかれました。

付録として、データCDがついています。年代別の路線図(電車案内図)と、車両竣功図表です。Windowsのみ対応です。車両の図面は見ても価値がわかりませんゆえ、専ら路線図を活用しています。車庫番号指定1年経過時点の大正4年(1915年)9月版から、撤去計画最終段階の昭和46年(1971年)4月版まで33種類が収録されています。過去に「わが街わが都電」の本文や付録で紹介された図も含まれています。一方、大正時代の二桁・三桁制の案内図は見つかっていないのか収録されていません。 本ブログで取り上げた範囲内では、

・昭和41年(1966年)6月版で既に18系統が削除されている
・昭和22年(1947年)2月版で狐塚停留場が掲載、一方富士見通、板橋町八丁目、巣鴨四丁目は含まれていない
・大正時代には小石川に「掃除町」停留場が存在していた

ことがそれぞれ確認できます。このCDの開封には袋に印刷された電車案内図の志村線部分を切り取るようになっています。相も変わらずの姿勢です。

しばらく交通局オフィシャルの都電写真書籍を発行する機会はなさそうですが、次に出す際には系統ごとの当時の姿を追えるような構成にしてくだされば嬉しいです。もちろん18系統の誤りは修正してくださいね。